葉物野菜の代表格ともいえるホウレンソウ。年間を通して全国各地で栽培され、日本の食卓には欠かせない存在となっています。
秋~冬にかけてはホウレンソウの旬。冷涼な気候が栽培に適しており、特に寒さにあたったホウレンソウは甘みが増し、その味は格別なものになります。一方、夏は最も作りにくい時期です。暑さに弱いホウレンソウは一般地では作りづらくなり、高冷地での栽培が多くなります。しかし出荷量が減り単価が上がる夏場に品質の良いものを作ることが出来れば、他との差別化を図ることができます。
今回は弊社品種の中から低温期と高温期にそれぞれ特性を発揮できる品種について、特性と使い分けをご紹介いたします。
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秋から冬はホウレンソウの栽培に適した季節で作付けも多くなる時期です。低温期でも安定して伸びることが「ブレード10」の最大の特徴です。また、冬の栽培では低温のためハウスを閉め切ることが多く、曇天が続く場合は多湿になりがちです。さらに栽培期間がほかの作型よりも長くかかることから、べと病が発生する条件が揃いやすくなってしまいます。そこで、べと病に高度抵抗性を持つ品種が必要となります。「ブレード10」はべと病レース1~10抵抗性を持っています。
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高温期のホウレンソウ栽培においては、軟弱徒長による収量の低下や生育の早さによる収穫期間の長さが課題となっています。「イーハセブン」は高温期でも生育スピードがゆっくりしていて一株一株がガッチリと育ちます。ですから一株のボリュームが非常にあり、収量性が抜群です。また、高温期の栽培では萎凋病が問題になります。特に連作圃場ではその傾向が顕著です。対策としては土壌消毒が効果的です。萎凋病の発生には品種格差がありますが、「イーハセブン」は萎凋病に対して強い特性があります。(ただし、激発圃場では発病が見られる場合がありますので土壌消毒等の対策が必要です。)
ホウレンソウは根が土中深くまで伸びる作物です。根系が十分に発達しなければ地上部ものびのびと素直に育ちません。深耕して排水性・保水性の良い圃場づくりを心掛けることが大切です。
未熟堆肥の施用は病害虫の発生を助長します。必ず完熟堆肥等の有機物を施用し、圃場の生物性・物理性を高めましょう。
条間15~20cm、株間5~9cm(高温期は広く、低温期は狭く)のすじまきを基本とします。排水不良の畑では高畝にすることをおすすめします。
*「イーハセブン」は株張りが特に優れる品種です。葉枚数も多いため、密植では株元が蒸れる場合があります。そのためやや広めに株間をとることをおすすめします。しかし逆に広すぎる場合は株が太りすぎるので注意します。
*また、「イーハセブン」は晩抽品種ではありません。5月・6月の抽苔期に播種する作型には向きません。抽苔の心配がなくなる7月以降の播種をおすすめします。
発芽までは圃場水分を切らさないように適宜灌水を行い、一斉発芽を促します。
*「イーハセブン」はほかの品種に比べて水分を多く要求するタイプの品種です。そのため生育中期までは圃場が乾燥しすぎないように注意します。
乾燥が強くなると、葉面のシワが強くなり、草丈が伸びず生育の停滞が見られます。そのような状態にならないよう、乾燥しやすい圃場では定期的な灌水が必要です。
ホウレンソウは高温に弱い作物なので、7~8月にかけての作型では遮光資材の利用が効果的です。播種後すぐに遮光し、気温、地温の上昇を抑えます。もっとも気温の高い時期は収穫まで遮光したままにしますが、8月下旬以降は収穫の1週間~10日前頃には遮光資材を外し、光を十分当てるようにします。
虫害では、ホウレンソウケナガコナダニ、アザミウマ類、アブラムシ類、ヨトウムシ類などが問題になります。いずれも被害が拡大する前に、予防散布や早期防除を徹底しましょう。
ホウレンソウのべと病はレース分化が進んでいます。新レースの発生を予兆することは困難なため、抵抗性品種であっても適期での効果的な防除を心掛けましょう。
「ブレード10」、「イーハセブン」共に草姿が立性なので収穫作業性は抜群です。また、共に下葉が取りやすいので調製作業も容易です。
ただし、「ブレード10」は生育が早いため、早春まきや暖冬の年などはとり遅れのないよう適期収穫を心掛けましょう。
近年、夏の猛暑やゲリラ豪雨、連作障害などの影響でホウレンソウの品種選びがますます難しくなっています。さまざまな品種がある中で、各作型において適切な品種を選び栽培することが安定した生産をする上でとても重要です。今回ご紹介した「ブレード10」と「イーハセブン」はそれぞれ産地からの評価も高く、自信をもってお勧めできる品種です。適期に作って頂くことで皆様のお役に立つことができれば幸いです。