最近、施設園芸地帯や野菜の指定産地などでは、連作などにより発生する病害が問題になっています。
そこでは、短期間に利用できる緑肥作物が導入され、効果を上げています。緑肥作物として利用されている草種の多くは、牧草としても使われているものです。
また、最近では「耕畜連携」という言葉が使われるようになりました。これは、畜産農家から米や野菜等を生産している耕種農家へ堆肥を供給したり、逆に耕種農家が転作田などで飼料作物や緑肥作物を生産し、それを畜産農家が家畜の飼料として利用することです。このような連携に対し、補助金などの助成制度が実施されています。
●有機物が増加し、土壌中の微生物がよく繁殖する。 ●土の構造がよくなり、水はけや保水力も高まる。 ●土壌中の微生物間のバランスがとれ、 ●施設野菜土壌の塩類濃度を低下させる。 |
■各種作物のC/N比(参考値) |
●C/N比(シーエヌ比・炭素率)
土壌中の有機物の動向を考える上で重要な指標です。たとえばC/N比が13の場合、チッソが1kgあったとすると炭素が13kg含まれるということになります。
C/N比が高い(20以上〕有機物が土壌中にすき込まれると、土壌中の微生物がそれを分解するために多くのチッソを必要とします。こまため、土壌はチッソ飢餓の状態におちいりやすくなります。対策として、石灰チッソを添加することが有効です。
逆に、C/N比が低い有機物の場合では多くのチッソが無機化して後作物に利用されやすい形になります。
●C/N比による緑肥作物の使い分け
緑肥の後作がチッソ要求量の多いタマネギ等の場合、C/N比の低いマメ科の緑肥作物が有効です。逆にダイズではC/N比の高いえん麦等が、根粒菌の着生も促進し、よい結果が得られます。
●菌根菌の有効利用
菌根菌は植物にとって有益な微生物で、根が届かない場所の養分を吸収して植物にも送ってくれます。特にリンサンを吸収する力が強く、植物にもリンサンをよく供給します。植物には、この菌根菌が共生する作物(宿主作物)と共生しない作物(非宿主作物)があり、以下のように分かれます。
宿主作物
ひまわり、とうもろこし、豆類、バレイショ、麦類、タマネギ、ニンジンなど多くの作物、ベッチ、クローバーなど多くの緑肥。
非宿主作物
なたね、キャベツ、ブロッコリー、シロカラシ等アブラナ科作物、てんさい、ホウレンソウなどアカザ科作物、ソバなどタデ科作物。
宿主作物を栽培する場合には、その前作に宿主作物を栽培することが有効です。逆に、非宿主作物を栽培する場合は、前作が宿主、非宿主作物のどちらであってもあまり影響はありません。
●腐熟期間
土壌中にすき込まれた緑肥作物は微生物によって分解されますが、その分解過程の中で一時的にピシウム菌が増殖します。そのため、緑肥のすき込み後は一定期間(夏期で3~4週間)をおいてから、後作の栽培に入ります。
●各種センチュウ抑制効果
緑肥作物を用いてセンチュウの密度を抑制することは最近盛んに行われていますが、主なセンチュウ抑制のメカニズムは以下の3つです。
(最近は「抵抗性打破系統」のセンチュウが出てきており、抵抗性を持つ品種でも、被害が出ることが増えています。そのような際、緑肥によるセンチュウ抑制は有効です。)
- 作物内で殺センチュウ物質をつくり、センチュウを殺す(マリーゴールド等)
- センチュウを根に侵入させるが、根内での増殖を抑える(または成長を停止させる)ため、センチュウが減る(ネグサレタイジ等)
- シストセンチュウを孵化させるが、栄養源とはならないため、シストセンチュウを餓死させる(ダイズシストに対するあかクローバー、ネコブキラー等。この場合、レンゲや黒千石は栄養源になってしまう)。
■主な緑肥作物中の肥料成分