本編では、レタスの代表的な病気の初期症状から罹病までの推移を、写真をもとにわかりやすく解説いたします。罹病後の治療対策ではなく、罹病させないレタス作りが理想的です。罹病に至るまでの発生要因を理解し、予防的初期防除・栽培対策が肝要です。
育成ステージ上での生育障害や、老化苗定植等、または、収穫遅れによる、生理的老化現象が、レタスでは顕著に現れる。また、極早生品種の特性からの生理症が発生する場合もある。これは、収穫時に発見できない場合も多く、出荷後の輸送途中・陳列棚・カット後にも発生する。
生理症は、栽培上での問題と品種特性の二つが原因。品種選択と栽培技術の向上が対策課題である。
老化症状として、赤軸・ピンクリブ・裂球・縁ぐされがある。
不適切な品種選択・長い育苗日数・活着不良・低温・乾燥・日照不足等による生育遅れが要因。抽たいとの因果関係はないので、トンネル栽培でも注意が必要。
極早稲品種群の中で、品種特性から生理症が発生する場合に多くみられる。これは、収穫時に発見できない場合も多く、出荷後の輸送途中・陳列棚・カット後にも発祥する。極早生品種は小球になりやすく、圃場で大きくなるのを待つと、結球葉が緻密になり、巻き込み等が発生しやすくなる。老化現象へ移行する。
リーフ系には発生しやすい「チップバーン」は、カルシウム欠乏とされている。葉先が薄く、濃緑色でない品種に出やすい。カルシウム欠乏の要因は、急激な肥料吸収、根痛み、多施肥等であり、老化現象の「緑ぐされ」と混同されやすく、区別する必要がある。「チップバーン」には塩化カルシウムの葉面散布が効果的。老化現象の「緑ぐされ」には薬剤散布の効果は期待できない。品種選択と発生しにくい栽培環境が望まれる。
レタスの連作地では、罹病した病原菌が土壌中にて越年し、発病条件化で激しく多発する。これを土壌病害という。また、病原菌が雑草・他の植物に感染する場合もあり、対策が年々難しくなっている。対策として、病原菌の発生条件を理解し、被害株の除去・輸作・排水対策・除草・加湿対策等に努めることが大切である。また、発生条件下でのレタス栽培をしないことも必要。
なお、抵抗性品種を対策とする連作は、土壌病害の性質から好ましくない。
高温多湿時に土壌で伝染するので、マルチ栽培・深植え防止・輪作・換気に注意する。進行すると、軟腐病を併発する。品種間の格差がある。薬剤散布と被害株の除去で被害の拡大を防ぐ。
根・茎・葉の基部・結球部等から発生し、激発的な被害にあいやすい。悪臭を伴うので他の腐敗病と区別しやすい。高温多湿栽培下で線虫やハエ等の害虫の食害・傷口から土壌を介して侵入する。品種間の格差はあるが、油断は禁物。害虫防除・収穫遅れ防止・高畝・マルチ栽培・排水対策・輪作が対策。初期防除が効果的。高度化成の他施肥・追肥に気をつける。
土壌・雑草から病原菌が感染する。春・秋の長雨などでの高湿で発生しやすく、土壌・霧・雨等による伝染で被害が広範囲に及ぶ。ハエ等の食害・傷口から侵入する。下葉から結球葉へ進行し、腐敗病等が併発、圃場が全滅する恐れがある。品種間の格差はあるが、初期防除が大切。全面マルチ・高畝・排水対策・雑草除去が対策。高度化成の他施肥で発病する傾向にある。
冬・早春収穫の作型で、葉の表皮が凍霜害により褐色-水浸状になり、軟化腐敗し枯死する。 晩夏・秋収穫の作型で、結球期に葉が暗褐色の光沢となり結球内部でも発病する(別名タール病)。排水不良の畑や長雨での発生が多い。結球から収穫時で病気への感受性が高まる傾向にある。収穫遅れは禁物。葉の薄い品種や堅く結球する品種で発病しやすい。 腐敗病の伝染源は、土壌細菌。輪作・排水・高畝・マルチ資材等の対策と予防散布が必要。 |
1.寄生線虫による根ぐされ病 冬・早春収穫の作型で、葉の表皮が凍霜害により褐色-水浸状になり、軟化腐敗し枯死する。 晩夏・秋収穫の作型で、結球期に葉が暗褐色の光沢となり結球内部でも発病する(別名タール病)。排水不良の畑や長雨での発生が多い。結球から収穫時で病気への感受性が高まる傾向にある。収穫遅れは禁物。葉の薄い品種や堅く結球する品種で発病しやすい。 腐敗病の伝染源は、土壌細菌。輪作・排水・高畝・マルチ資材等の対策と予防散布が必要。 2.フザリウム菌による根ぐされ病 主根の内部が褐変腐敗する。生育が著しく不良となり下葉が黄化・小球・不結球となる。発病症状は、温度上昇と比例関係にあり20℃以上で生育が止まり、しおれる。低温(夜間)で復活し、これを繰り返す。罹病すると生育ステージ全般に影響を受けるので、生育遅れ、不結球・変形球・老化玉・巻き込み症・腐敗病の原因となる。 |
冬収穫の作型で、12月中旬から発病し2月ごろがピークとなる。葉脈が透過し、太い葉脈のように見え、進展すると外葉の縮れが細かくなり虎斑点状になる。不結球・小球・老化球・変色球となり商品価値が低下する。発病地温は17℃以下、PH6.0以上、多湿条件下で発病する。伝染源は土壌細菌で、一度発生すると、圃場長期間生存する。このため、連鎖口では被害株の2次汚染により汚染圃場が拡大する傾向にある。育苗容器の消毒・土壌の酸性化・土壌消毒・栽培時期変更・輪作等の総合対策により被害の拡大を防ぐ。 |
カビ(糸状菌)は、多湿と適度の温度条件下で増殖する。植物に寄生し、有機物を分解・吸収し生育障害をもたらす。植物の生育環境の様々なところで出現するので、発生・罹病させない栽培体系・環境・予防散布を考慮する必要がある。空気の流れの悪い圃場や多湿土壌で発生しやすい。いったん発生させると、進展を止めることが難し区、壊滅的被害となりやすい。また空気・霧伝染からの発生も多く、広範囲の被害になる。肥料切れの株・徒長株・老化株が被害に遭いやすいので健全な生育ステージが望まれる。
発病に好適な温度は約20℃で、多湿条件下で地際の茎・葉に灰色のカビを密生する。 |
低温多湿条件下で発生しやすく、土に接する茎・葉の基部に白色綿のカビが生じ腐敗する。進行すると株全体が腐敗する。伝染源は前作の被害株からの菌糸と胞子が飛散する空気伝染である。10月から4月頃の低温多湿条件下で発生しやすく、ハウス栽培・トンネル栽培の換気に留意して加湿を防ぐ。密植栽培、高畝・マルチ対策、輪作を行う。いったん発生すると防除が難しくなるので予防散布が効果的である。他の野菜・花からの空気伝染も考慮し気象天候に合わせた防除を行う。灰色カビ対策の薬剤と同時散布する。 |
葉の表に葉脈黄緑色の斑点ができ、葉の裏に灰白色のカビが発生する。進展すると株全体が黄緑色の斑点模様となり商品価値が著しく低下する。伝染力が強いので壊滅的被害となりやすい。発生適温は20℃で、低温多湿条件下で発生する。早春収穫の作型では、秋冬の低温期の感染後、春先の温度上昇・多湿下で激発し被害が拡大する。初夏収穫の作型では、育苗時に感染し、本圃での低温多湿で激発する。軟弱生育株・収穫遅れ株・老化株が被害にあいやすい。罹病した雑草・他の野菜からの空気・霧伝染により広範囲で発生する。初期防除・罹病株の除去隔離が肝要。流行性があり気象天候に合わせた防除を育苗時から行う。 |
本編はレタスの生理・病気を育種現場・経験から述べたもので、病理学的には、不足や不適格な表現があると思います。詳細は専門書をご覧いただきたくお願い申し上げます。
なお、防除薬品等については、お近くの農薬販売店・普及センター等へお問い合わせください。弊社ではお答えできませんので、悪しからずご了承ください。
冬どりレタスにおいて、最低気温が0℃以下になると、レタスの結球葉表面が結氷により皮下組織の剥離が発生する。これは低温障害。特に暖冬気味の温度生育経過後に低温に逢うと、0℃以上でも発生する。結球体制でこのような凍霜害を受けると、腐敗病の原因となる。1・2月収穫の作型で発生しやすく、早生品種での被害が大きい。細菌斑点病と併発することもある。長すぎる育苗、老対策は次のことが効果的である。
1.被覆ビニールを厚くする。 |
低温で、表皮剥離した結球葉の傷口に細菌が侵入し、高温多湿にて罹病する。寒さの厳しい厳寒期での発生が多く、時には結球内葉でも発生する。空気中の水分で拡散し、放置すれば広範囲で激発することが多い。生育遅れの老化した早生品種がかかりやすい傾向にある。
対策として次のことが考えられる。
1.老化苗は植えない。 |
ビニールハウス育苗で、ハウス内の温度が25~30℃以上になると、芯葉の成長が止まることがある。一度この高温障害にかかると回復はしない。この苗を定植すると不結球となる。高温の空気が停滞する場所で発生するので、育苗箱内で全てが発生するとは限らない。ハウス育苗では、空気の循環を良くし、25℃以上にならないように換気に努める。
1.通風のよい場所で育苗する。 |